音楽療法は誰がやるのか?

音楽療法は誰でもできる?

音楽ができる人が担当すれば音楽療法?

音楽を使った支援であれば音楽療法?

見ている人は違いがわからない?

私の考えるその答えは、「どれも正しい」です。

なぜなら音楽療法士は国家資格ではなく、誰が「音楽療法」をうたって実践しても法に触れることはないからです。

 

日本でもこの20年間で音楽療法に対する認知度が上がり、多くのスクールが広告を出しています。

「2週間で資格が取れる」

「オンライン授業を受けて課外提出で資格が取れる」

どれも、簡単で短期間、安価であり、実践や実習指導を伴わないものですが、「音楽療法を学びたい」と思った方には手軽に受講できるのが魅力なのでしょう。パッケージ化されることで消費者には手軽にアクセスできる。これは悪いことではありませんが、どの資格も同じだと考えるのは危険です。

私の持っているアメリカの音楽療法士資格Board Cirtified Music Therapist(MT-BC)は米国の認定大学、大学院を卒業することの他に1200時間の実習(スーパーバイザーの指導付き)が必須となります。資格取得後も経験豊富なスーパーバイザーからの定期的な実践指導を受けることが推奨されています。米国で音楽療法士として就職する際、この資格を持っていることが条件です。

では日本で音楽療法士を選ぶ時は何を基準に選べば良いのでしょうか?

その答えは、「自分が納得できる音楽療法士を選ぶ」です。

音楽療法士が

  • どこでどのような教育を受け、
  • どの理論を採用して、
  • どのようなプログラムを、
  • 何を目的として提供するのか
  • これまでどんな対象者に、どのような音楽療法を提供してきたのかを質問してください。

 

これは主治医を選ぶ際と似ています。

治療へのアプローチは何通りもある。その中で何を基準に選ぶのかは、自分の感覚と医師の感覚が合うのかどうかということに尽きるのです。パートナーとして病と戦う相手を選ぶのですね。

あくまで基準としてですが、狩谷が一緒に仕事をするために採用する音楽療法士は、日本音楽療法学会認定音楽療法士または全国音楽療法士養成協議会1種の資格を有する音楽療法士又は海外の大学・大学院で音楽療法を学び学位を得た方のみとしています。

資格があれば良いというものではありませんが、本気で時間と費用をかけて音楽療法を学ぶ決心をしたという一つの目安になります。しかし、セラピストとしての実力は資格取得後から実践を通して培われるものです。

そこで実践に欠かせないのがスーパービジョンと呼ばれる指導です。これは日本でいう「先生から教わる指導」のイメージとは少し異なり、音楽療法士が自らの感情やアクションを振り返りながら、客観的視点を養い、より冷静で効果的な介入と分析ができるようになるための導きのようなイメージです。スーパーバイザーからの効果的な問いかけにより音楽療法士は新たな見解を得ることができ、提供するセラピーの質が向上します。

 

私は音楽療法士としての仕事、そして音楽療法士をスーパーバイザーとして支える仕事が何よりも好きです。

対象となる人たちと言語を超えた音楽の中でコミュニケーションをとり、その人の可能性を探る。そして成長への導くことができる喜びは他にないのです。

だから私は音楽療法士として、自分の受けた教育、知識、経験の全てを活かして対象者と全力で向き合いたいと考えています。そしてできないことは「できない」と伝えます。

この度退職することになった音楽療法士の仲間がこんなことを言っていました。

「私たちは音楽療法をしないと生きていけない体質になっている」

ユーモア溢れる発言に笑いながら、「いや、本当かもしれない」と思いました。

家族には「ママは音楽療法クレイジー」と言われるほど私はこの仕事が好きです。

色んな価値観が交わり合う今、「音楽療法」がパッケージ化されて「誰でもできる」と売られる事が増えたように感じます。

これを私には変えることはできませんし、変えようとも思いません。

ただ必要な人から「あなたにお願いしたい」と選ばれる音楽療法士でありたいです。

音楽療法を全力で実践してきた音楽療法士達、最後まで音楽療法を守ろうと戦ってくれ、サポートしてくれたスタッフ達は私の選びたいスタッフです。

 

 

投稿日:2025年4月15日